日本語を第二言語として習ったひとなら、こんなふうに教えてもらったのではないでしょうか。
「〜してください」は丁寧な言い方、「〜して」はカジュアルな言い方。
そうなのです。
「〜してください」は決して敬語にはならないのです。
「〜してください」は単なる丁寧語だ
日本語には接頭語(または接頭辞)というものがあります。そのものだけでは意味をなさないけれど、他の単語の前につけられます。現代一番良く使われているのは「お〜」や「ご〜」などですね。例えば「お仕事」「お店」「ご関係」「ご両親」のように使われます。
漢語の熟語には接頭語がもっと沢山ありますが、この記事では関係ないので割愛します。
「〜して」は相手の行為をうながす命令表現で、「〜して」に「ください」をつけたからと言って敬語にはなりません。先に述べた接頭語と同じく、ただの丁寧語なのです。
つまり、知らずに使っていると相手への敬意を損なってしまいます。
「〜してください」を敬語に修正してみよう
敬語を使って相手に何か要求するときには、まず「〜して」をやめましょう。これが入るだけで、敬語ではなくなるからです。
接頭語の「お」や「ご」のある熟語には「ください」だけをつけて、尊敬語にすることができます。
- ご参加ください。
- ご記入ください。
- ご利用ください。
また、「する」の尊敬語、つまり相手を上に立てる言い方には「なさる」と「される」があります。「なさる」と「ください」を使うと、お願いする形になります。この場合丁寧になりすぎないように、「ご」をつけない場合のほうが多いと思います。
- 参加なさってください。
- 記入なさってください。
- 利用なさってください。
「される」は「ください」と対にすることはできません。誤用です。「ご参加されてください」とは言いません。
「する」だけではなく、他の行為をうながすときにはこちらを参照してください。
- 来てください→いらっしゃってください、おいでください、お越しください
- 行ってください→いらっしゃってください、おいでください
- 食べてください→お召し上がりください
- 見てください→ご覧になってください
- 言ってください→おっしゃってください
「ください」? それとも「下さい」?
ネットを見ると、どちらも使われているようでとまどいます。
日本語ではどちらも正しいように見えますね。近代文学などはほとんどが「して下さい」を使っていますし、漢字変換も一発で出てきます。
でも、意味の上では違います。
本動詞は漢字ですが、補助動詞はひらがなというのが文法上の基本なのです。
つまり、「りんごを下さい」「お豆腐を下さい」など、物をもらう場合で他の動詞がついていないと「〜を下さい」となります。そして、何かの行為をしてほしい場合は、補助動詞として「〜てください」というひらがな表記になるのです。例えば、「話してください」「書いてください」「買ってください」などですね。
これは2010年に発令された公用文における漢字使用等について(平成22年内閣訓令第1号)に詳しく書いてあります。
そして、公用文はこの発令に従っていますし、新聞も同様です。
日本語が第一言語のわたしたちは、あまりそうした違いを気にせずに使ってしまいがちですが、読みやすさという点からもこうした漢字使用には従ったほうがいいとわたしは思います。