意外と知られていない「耳触り」と「耳障り」の混乱しがちな意味の違い

「耳ざわり」という言葉ですが、これには二つの意味があって時々とまどうこともあります。
書くときは漢字があるからまだいいのですが、話すときには注意が必要な言葉でだからです。

 

「耳触り」か「耳障り」か

 

最初に「耳ざわり」と書きましたが、これには漢字があります。
それによって意味の違いがある程度わかりますが、話すときには漢字を当てはめてはいませんから、混乱を生じます。

 

 

辞書には、違いが簡単に説明してありました。

 

精選版 日本国語辞典」2006年、小学館

みみーざわり【耳触】
〚名〛聞いたときの感じ、印象。
みみーざわり【耳障】
〚名〛(形動)聞いていて、気にさわること。聞いていて不愉快に感じたり、うるさく思ったりすること。また、そのさま。

 

つまり、「耳触り」は気持ちが良い悪いにかかわりなく、耳という器官に直接「感じられた」こと。「触る」に器官名を追加することで、「聞いたときに」感じられたことを表現しているわけです。「歯触り」や「肌触り」も場所は違えど同じような「触れたときの感じ」です。

例えば、「耳触りのよい言葉ばかり並べても、ひとの気持ちに訴えることはできない」「あの曲はとても耳触りがいいが、それだけですぐに忘れてしまう」などと使います。

注意してほしいのは、「耳触り」が名詞としてのみ出てくることです。

そして、「耳障り」は要するに「聞いてカチンと来る」こと。
例えば、「クカバラは耳障りな鳴き声を持っている」「あんな冗談は耳障りで聞いていられない」のように使えます。

そして、こちらの「耳障り」は形容動詞でもあるのです。つまり「な」をつければ名詞を修飾できるわけで、「耳障りな声」でもいいのです。
「耳触り」のほうは感覚の良し悪しまでは含んでいないので、「耳触りな声」とは決して使えないと覚えておいてください。

 

それでは普段はどう使われているかというと

 

2002年に文化庁下の国立国語研究所で発表した「国語に関する世論調査」でも、このことに触れています。
「耳ざわり」として「漢字を使わずに出した質問」では、ほとんどのひとが老いも若きも「「聞いていて気にさわること」を選んでいるのです。実に86%ものひとたちという結果が出ています。

 

 

ところが、これだけ多くのひとが「耳ざわり」を「聞いてカチンとくること」ととらえているのに、その「耳障り」という漢字を使ってもうひとつの「耳触り」の意味で使う場面に出くわします。

例えば、「耳障りのよい音」「耳障りのいいことば」など。
発音が同じで、「歯ざわり」「手ざわり」などからも連想できることから、こうした漢字の間違いが生まれているようです。

 

「耳触り」と「耳障り」の漢字にご注意

 

話していて「耳ざわり」という言葉が出てくるとき、それを誤解するひとはまずいないと思います。
でも、書き言葉としての漢字の間違いは読み手の混乱を引き起こします。

例えば「耳触りのいい音楽」の場合、どちらかと言うと「耳に心地良い音楽」と書いたり言ったりしたほうがはるかに誤解が少ないと思うのですが、いかがでしょう。